企業としての総合力と「制作」へのこだわり。バンドスタジオとの併営で大きな付加価値を提供。
梅田Zeela
●ベースオントップ運営のライブハウス
梅田Zeelaは、今や日本を代表する総合音楽サービス企業となったベースオントップのライブハウス事業として運営されており、6店舗もある大阪エリアの系列ライブハウスで唯一「大阪キタ」に位置している。
ベースオントップの創業は1981年。バンドスタジオ運営を皮切りに、レコーディングスタジオ、ピアノスタジオ、アカペラスタジオ、ダンススペース、多目的ホールの運営へと業務を拡大。ホテルの業務管理をはじめとする音響・照明・映像業務や楽器・音響・照明・映像機器レンタル業務、楽器・音響・照明機器販売、コンサート・イベント企画・制作・運営 ・舞台設営をも手がけてきた。
40年以上にわたって培ってきた、ハイクラスなサウンド・ライティングシステムと、洗練されたステージは、梅田Zeelaの第一の特長となっている。そしてバンドのライブイベントやクラブイベントだけでなく、ダンスイベント、ファッションショーやヘアーショー、プロモーションビデオの撮影、各種パーティーなど多種多様なエンターテイメントスペースとしての利用価値が高い(クオリティ&パフォーマンス)といった特長も、企業の総合力によるところが大きい。
●「ブッキング」ではなく「制作」
梅田Zeelaの誕生は2013年11月のことだ。『バンドスタジオベースオントップ大阪梅田店』、『ライブハウス梅田Zeela』として併設出店された。
ライブハウス運営は、ベースオントップ創業以来の基幹をなすバンドスタジオ運営と密接な関係性を持って位置づけられており、梅田Zeelaがその典型であるように、この「バンドスタジオ運営との併営」が梅田Zeelaのもう一つの大きな特長となっている。
そして、アーティスト側から見ると、ライブの企画・制作のプロとしてのクリエイティブにも強みを持つ梅田Zeelaには、ともにライブを創り上げていく、「アーティストのパートナー」としての魅力が大きい。
梅田ジーラ店長・橋本嘉文はオープン時から店長をつとめている。彼自身、高校生の頃からクラブを借りてイベントをしていたアーティストだ。
「とにかくクラブで働きたくて、クラブのバイト募集を探していたら北堀江にある『club vijon』がバイト募集をしていたんです。名前からして、てっきりクラブだと思い込んで、早速行ってみたら、そこはなんとベースオントップが経営するライブハウスでした。大間違いだったのですが、90年代UKロックも好きで聞いていたので、まあ、いいかと(笑)。それが、この業界、この会社に入ったきっかけです。」
入社の経緯を語ってくれた後、橋本はこう続けた。
「ライブイベントは、その「制作」に携わる人によって良くも悪くも大きく変わります。好きこそ物の上手なれと言いますけれど、例えば私が、ブラックミュージック、特にグルーブ感の高いものが大好きで、だから自然にその制作を得意するように、ヒップホップ、ロック、ロックでもギターロックが得意だとか、ポップスでも女性ボーカルなら任しとけとか、Zeelaには、多彩なジャンルに精通している制作スタッフが揃っている。それは、大きな強みだと自負しています。」
Zeelaでは「制作」と呼ばれる仕事は、いわゆるブッキング担当と同義ではあるが、イベント制作に深く関わろうとするスタッフたちの姿勢が「制作」という職種名からも伺える。
ホームページには「あらゆるシーンに幅広くネットワークを持つ底抜けに明るいスタッフが皆様の音楽活動を盛り上げます」とうたわれているが、まさに、なんとも的を射たアピールではないか。
●ヤミナベデスマッチ
梅田Zeelaのキャパは、スタンディングで250人。これが100人以下では、イベントレベルが低くなりがちだし、逆に500人を超えると、今度は対応可能なバンドが限られてきてしまう。このスタンディング250という規模に適正感のあるアーティストは、実に幅広いと思われる。
ボクシングでいえば、世界的に平均的体格人口の多いウエルター級、ミドル級あたりが「激戦区」でチャンピオンになるのは極めて難しいとされるようなもので、この規模のライブハウスが最も需要が高いのではないだろうか。
しかも、バンドスタジオとの併営である。
立地も大阪キタの中心部なので、バンドスタジオを利用する人は多い。スタジオに出入りするバンドは当然、併設されたライブハウスであるZeelaを意識する。
事実、Zeelaの制作スタッフが、バンドの実力、強み弱み、課題、望んでいることなど詳細に理解している、その情報がどんどん蓄積されていく。
そんなZeelaでは、今こんなイベント企画が当たっている。名付けて、「ヤミナベデスマッチ」。コロナ禍に対応し「配信企画」として始めたものだ。制作スタッフが、「このバンドのボーカルにこの歌を歌わせたらすごく面白いんじゃないか?」「この人のこの曲のギタープレイはいいと思う」など、密接な関係にある50組程度の賛同メンバーたちに、制作スタッフが課題曲を渡し、それをイベント当日初めて会うメンツでぶっつけ本番ライブをするという企画だ。
「ミュージシャンにとっては、いわゆる他流試合。自分のプライド、存在価値をかけた真剣勝負の場となります。課題曲に取り組むことで、これまでやってこなかったバンドのサウンドをコピーできるし、視野が広がります。初めてぶっつけ演奏をする相手との出会いが生まれ、参加するたびに知り合い、人脈も増えますよね。
事前練習禁止なので、音源にある程度寄せた上での個性発揮が求められますし、一発本番なので身勝手で違和感のあるプレーはできません。
当然、一定以上のレベルに達している実力者たちが揃って成り立つ企画ですが、これが互いに切磋琢磨できる機会として大評判なんです。聞き手にとっても新鮮で、音楽の可能性や幅を広げる良い機会になるようです。」
橋本が手応えを感じているこんな企画ができるのは、「制作スタッフ」が常に多くのバンドの多くの才能を把握しているからなのである。
●基本Zeela presents
梅田Zeelaのスケジュールカレンダーを見るとよくわかるが、平日は基本Zeela Presents、つまりZeelaの制作スタッフによる自前イベントばかりである。もちろん土日は、早々に年内スケジュールが決まってしまうほどの需要があるから、平日はこうしたZeela Presentsコンセプトで「制作」が腕を振るえるのだ。
「当社では「制作」と称していますが、ブッキングというのは、バンドのランクとか人気度、動員力にその成立がかかってきます。それをバンド側任せにするのは簡単かもしれませんが、どういう対バンが面白いかとか、こんな企画に乗ってみないかと、バンドの指向性を理解した上で的確な提案をすることが、うちの「制作」にとっても「バンド」の皆さんにとっても、『ブレイクスルー』のきっかけになることが多いです。いい提案とは?いい企画とは?それは私たちの仕事にとって、永遠のテーマではないでしょうか。」
一般的には、バンド側からライブハウス側に、音源を持ち込んでアピールすることはよくあることだ。
「そういう意味では、うちがバンドスタジオを併営していることは、ちょっとスタジオでやってもらってそれを聞かせてもらったり、より深いコミュニケーションができたりと、制作スタッフとバンド相互理解にはプラスなんでしょうね。イベントに誘いやすいし、ピントもずれない。結果として窓口間口が広い感じになっているかもしれません。」
サウンド面がしっかりしていることは、ライブハウスとして基本中の基本だとして。
音楽ジャンルやバンドのこだわりに、柔軟かつ幅広く、しっかり合わせていく力量、そしてバンドのニーズを把握した上で面白いイベントを自分たちから発信していく力。これらは梅田Zeelaの大きな強みと感じた。
●インキュベーション(バンド孵化)のやりがい
「立地面ですが、遠征バンドの方とか、他府県からのファン動員が多いバンドにとっては、アクセス的にすごくいいですよね。新幹線からのアクセスがスムーズですから。」
「ライブ空間としてのサービスとしては、お酒も楽しみやすいようおしゃれなバーカウンターに、遊び心たっぷりのメニューを取り揃えて、お酒が好きな人も楽しめるよう努力しています。」
「ちょっと飲んだらパーンと決まる、強烈なのもあるし。まあそれははっきり言って強烈だがまずい(笑)。だから『マジーラ』と命名しているメニューですが。」
最後に、橋本は目を輝かせてこう結んでくれた。
「ここで、バンドが実力と人気を高め、巣立っていくことに大きなやりがいを感じます。最初は閑古鳥が鳴いていたというレベルから、どでかい箱をいっぱいにしていく、その成長の過程を見るのは最高です。これからも、真面目に、より面白い音楽を届けられるように。やることをしっかりやっていきます。特に毎年11月は周年月間として盛り上がります。今までここで頑張ってくれてたバンドが勢ぞろいしてくれるイベントもあります。そんな梅田Zeelaは、バンド、そしてファンの皆様の音楽にかける情熱を輝かせる努力を続けていきます!」